夢と我

投稿日:2021年8月9日 更新日:2024年3月18日

ご覧いただき感謝!賢・衣莉

 若い一匹の蛾が、頭上のひとつの星に思いを決めた。

 母親に告げると、彼女は、近くの街灯にしなさいと忠告した。

 「私たちが回るのは、街灯のまわりに決まっているでしょう」

 父親も言った。

 「星を追いかけて、いったい何になるんだ」

 でもその蛾は両親の言うことに耳を貸さなかった。

 夕闇が訪れ、星が輝き始めると、蛾は毎日のようにその星を目指して飛び立ち、明け方ごろ、空しい努力に疲れ果ててふらふらと戻ってくるのだった。

 ある日、父親が言った。「おまえ、まだそんなこと、やっているのか。もう、おまえのようなやつは勘当だ!」

 それでも蛾は飛ぶのをやめなかった。

 家を出て、何光年も離れたその星に向かってひたすら飛び続けた。

 来る夜も、来る夜も。

 やがてたいそう年老いた蛾は、もう星まで飛んでいくことができないのを知った。

 しかし、心は満たされていた。

 本当に星まで行ってきたような気がしていた。

 彼はその話を若い蛾たちに話しては聞かせた。

 彼の喜びは深く、いつまでも続いた。

 大人は若い人に「夢を持て」と言う。

 「大きな夢を持て」と。

 ところが、一方で、その夢を潰しにかかるのもまた大人たちだ。

 「そんな夢みたいなことを考えて、人生を台無しにするのか」と。

 確かに、あなたの夢や願望のすべてが必ずしもかなうとは限らない。

 しかし、夢に向かうその過程には、その夢を何もする前からあきらめてしまう中では決して得られなかった喜びがある。

感謝

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